ビーフシチュー。
会社で、それまでなら何としても口にしないはずのその料理を、なぜかその時食べてしまった。
砂漠に水。止まらなかった。目に入る料理をガンガン食べた。
その時の自分にとって、あってはならない最大の罪。
絶食が続いた。そしてまた大量に食べてしまう日。絶食。過食。絶食・・・。
過食になるともう理屈抜きにコントロール不可能。
我慢とか、そんなレベルで無く、ずっと息を止めてると、どう頑張っても、例え自殺願望が強烈にある人でも、必ず吸ってしまうと思う。
それと似てる。と、あたしは思う。本能が生きようと必死なんだと思う。
ここでやっと自分がおかしい事に気付いた。
と言っても、本当の意味ではまだ分かってない。
「何で普通に食べれないんだろう」ではなく、「なんで絶食出来ないんだろう。」だったから。
「普通食。普通食。普通食。」のサイクルを望んでたのではなく、「絶食。絶食。絶食。」を羨望してたんだから。
ほんとにおかしな話。
彼氏に泣きながら訴えた。「食べるのが止まらない。」って。
「いっぱい食べれて良かったな。」っくらいに流されてたけど。初めは。
それでもある日、彼氏が寝たのを見計らい、夜中に目の前のコンビニへ大量の食べ物を買いに行くあたし。
朝、食べ過ぎで倒れてるあたしと、食べ散らかしたゴミの山を見て、「何やってんだよ!?」って怒鳴りながらも戸惑う彼。
それからも何度かそんな事があり、「何で我慢出来ねぇの!?」って何度も何度も怒らせた。
過食の度に、「気持ち悪い。太る。どうしよう。」って、勝手に過食し、後悔し、彼氏に自分じゃ抱えきれない不安と焦りと恐怖を、繰り返しぶつけてた。
怒るのは当たり前だ。「だったら食べなきゃいいじゃん。」って。
食べたくない気持ちは強烈に持っていながら、意志に反して、最も恐れている行為をやってしまう。
そんな自分の気持ちを正直に話し、病院行きを決意。
「摂食障害という言葉を聞いた事がありますか?」ここでやっと病識を持つ。
彼氏はその頃仕事を辞めて、喫茶店の手伝いのみの生活になる。
そして、収入が減ったから今までみたいな生活費出せないって事と、仕事と家事の両立がお前のストレスになってるんじゃないかって事、
1人の時間を持つ事も必要かもしれないって事、
そんな様な理由で8ヶ月共に過ごしたあたしのアパートから自分の家へ戻った。
その頃のあたしには、彼の言葉はまるで届いてなくて、「見捨てられた」それだけだった。
今考えると、正直、思考も行動も異常としか言い様が無く、感情も不安定で、幼児以下な女に振り回され、
彼の方がストレスが溜まってただろうし、かなりの疲労だったと思う。
彼自身、仕事を辞めて、今後の人生と転職について真剣に考え、悩んでる時期だったのに。
支えるどころか、彼に覆い被さり潰してしまってたと思う。
申し訳無いし、あの時期必死に支えになってくれてた彼に、心の底から感謝する。
彼が出て行き、それからはもう雪崩の様に崩れ落ちた。
「吐けばいいんだ」そう思った。
過食した時だけ吐いてしまえば、前のようになれる。太らない。
そこから毎日食べ吐き生活になるまでに時間は要さなかった。
彼氏からの毎日の電話で、「また食べ過ぎた。どうしよう。もうダメだ。」同じ事をひたすら訴える。
気持ち悪くて吐いたと言ってたけど、ほんとは指を喉の奥まで突っ込んで掻き出すように吐いてた。
その頃の感情の不安定さと異常さは物凄くて、彼にはアレしたい、コレしたい、ココ行きたいって願望ばかりを言う。
断られれば「見捨てられた」と感じ、泣いてわめく。
・・・ほんとに、、、どうしようもない化け物だった。人間じゃなかった。
このままじゃあたしは捨てられる。もっと痩せなきゃ捨てられる。(大間違い!!)
こんなに彼に迷惑を掛け、重荷になっているにもかかわらず、それに気付かず、全ての基準は体重。
捨てられる事への恐怖感は強烈で、吐いてるか、彼氏に電話するか、プライベートな時間はそれのみだった。
電話が繋がらなければ、また食べ吐きが始まる。
捨てられるかもしれないという重圧に堪えきれず、だったらあたしから別れればいい、そう感じてたりもした。
最も見捨てられたくない人に、見捨てられる事が怖くて、だったら自ら離れたい。
けど傍にいたい。そんな訳の分からない渦の中にいた。
行動も、思考も、自分の事しか見えてないなって思う。
相手を思いやる気持ちなんてその頃は微塵も(今もかな・・・)持ち合わせていなかった。
でも、言われたんだ。
「今はまだ言えないけど、もう少ししたら言いたい事があるから。」
聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。
そう思った。もう分かってたから。
「今言って。」
「全部白紙に戻したい。」
別れたいでも、別れようでもなく、確かにこう言われた。
白紙に。そう言った彼の真意は分からないけど、忘れたかったのかな。
同棲後半戦、狂った生活に巻き込まれた時間を。
それが2002年10月末くらいだったと思う。
1月、彼氏が出来てほんの少し落ち着くが、それまでの2ヶ月間は吐く為に食べるようになっていて、
会社の帰りに大量の吐きやすい物を選び抜き、胃が破裂しそうになるまで食べ、吐く。
朝までそれを繰り返し、仕事に行く日々だった。
睡眠時間よりも、友達からの電話よりも、何よりも吐きたかった。
仕事中吐く事もあったし、休みの日なんて1日中って事もあった。
吐く瞬間のスッキリ感があたしには覚せい剤だった。
汚い思い出が、寂しさが、恐怖感が、不安が、焦燥感が、吐く瞬間だけ真っ白になる。
結局それ以上の後悔の嵐が襲ってくる事を分かっていながら、この怪物行動に溺れていた。
彼氏が出来て、一時過食嘔吐はマシになってくるんだけど、完全じゃなかった。
嘔吐日が毎日から3,4日に1回に減ったくらい。
止めたくて止めたくて、もう吐くのはいやだって本気で思うんだけど、衝動が爆発する。
強迫されてるように食べ吐き行為に吸い込まれる。
彼には毎日聞かれて、正直に話してたし、彼の電話に出るより吐きたかったので、電話も無視してたり。
「前より減ったんだから偉いよ。仕方無いよ。」って言ってたけど。
その彼と別れたのが2003年4月。
過食嘔吐はもう大暴走してた。
指を使わなくても吐けるようになり、1日中何をしてても早くうちに帰って食べたい、吐きたい。
それしか頭になかった。
そして、6月末、限界を感じて、家族の説得に応じ、退社。
いい思い出も、悪い思い出も詰まったアパートから実家へ引っ越す。
その後は日記の通りな訳だけど、過食嘔吐は無くなってない。
それでも、良くなり、悪くなりを繰り返して、少しずつ無くなっていくんだと思う。
そう信じたい。
過食嘔吐の出口は、吐く事を止める事だと思うけど、それってすっごいおっきい覚悟が必要。
過食はもう悪癖となってるだろうから、いきなり無くなる事は多分無い。
けど、そこで吐いちゃダメ。
太っても何でも嘔吐から脱出しなきゃ、過食は治まらないと思う。
吐かないでいると、だんだんと過食は無くなっていくから。
覚悟決めたら実行してほしい。過食嘔吐の海に溺れている人がいたら。
自分にとって1番大事なものは何か、自分はどうなりたいか、難しいけど、そこを考える事が大事かなと。
きっと出口はあると思う。歩く事を止めなければ。
2004.3